【よい朝のあるまち#1】学生寮から聞こえる、いつもとは一味違う元気な声 
――『こども食堂 けーゆーはうす』

【よい朝のあるまち#1】学生寮から聞こえる、いつもとは一味違う元気な声
――『こども食堂 けーゆーはうす』

       

「お兄ちゃん、一緒にあそぼ!」
日曜日の昼下がり、関西大学国際学生寮「KU I-House」(以下、KU I-House)の食堂に、弾んだ声が響き渡ります。
駆け寄る子どもの目線の先にいるのは、年の離れた兄姉ではなく、ここで暮らす大学生たち。

今回で9回目を迎える、「KU I-House」での「こども食堂」。

普段は学生たちの学びと生活の場であるこの寮が、地域を包み込む温かいサードプレイスに変わり、今や「まちのリビング」として地域に溶け込み始めています。

コーポレートスローガン「よい朝のために。」を体現する“まち”にフォーカスする連載「よい朝のあるまち」。
その第1弾として、ここで生まれる温かい繋がりが、子どもたち、保護者、そして学生たちの「よい朝」にどう繋がっているのでしょうか?

まずは賑やかな笑顔に溢れる「こども食堂」の様子をレポートします。





学生寮が「まちに開かれた場所」になる理由


関西大学の専用寮であるKU I-Houseは、世界各国から集まった16名の留学生と日本人学生がともに暮らす、国際色豊かな国際交流寮です。
多様な文化が交差するこの寮で、今回のこども食堂をはじめとする数々の温かい取り組みを企画・運営しているのが、学生スタッフである「RA(レジデント・アシスタント)」たち。
2015年のRA制度スタート以来、現在は北海道から九州まで約210名のRAが活動しています。

普段の彼らの役割は多岐にわたります。
季節ごとのイベントを企画して寮生同士のコミュニケーションのきっかけを作ったり、生活の困りごとをサポートしたり。
時に寮長夫妻と寮生の橋渡し役となりながら、寮に活気と思いやりの循環を生み出す存在です。

そんな「コミュニティづくりのプロ」とも言えるRAたちが、寮という枠を飛び越え、地域のために主体となって創り上げたのが、この『こども食堂 』なのです。
 

くもり顔から晴れやかな笑顔への変化


受付開始の時刻になると、お母さんと手を繋いだ子、友達同士で楽しそうに歩いてくる子、あるいは少し緊張した様子で一人で歩いてくる子など、地域の子どもたちが続々と集まってきます。



学年も違えば、通っている学校もバラバラ。普段とは全く違うコミュニティの中に飛び込んでいく子どもたちの顔には、どこか不安の色がにじんでいます。

ですが、そんな子どもたちの緊張を一瞬で笑顔に変えてしまうのがKU I-Houseの寮生たちです。彼らには、歴代の先輩たちから受け継がれてきた、過去8回にわたるこども食堂の経験とノウハウがあります。

「こっちにおいで!」 「お兄さんと一緒に、お名前カードを書こう!」

そんな温かい声かけとともに始まった自己紹介タイム。
気がつけば、あちこちから弾けたような笑い声が響き渡り、子どもたちの曇り顔はあっという間に晴れやかな笑顔へと変わっていきました。

会場の雰囲気がぐっと温まったところで、いよいよ今回のこども食堂のメインである「ご飯」の時間が始まります。



 

国際色豊かな寮ならではの発想!食で旅する世界「ロコモコ」


笑顔があふれ、お腹も空いてきたところで、いよいよお待ちかねのランチタイムです。

普段から管理栄養士考案の夕朝食を提供し、「食」にこだわりを持つ当社の学生会館「ドーミー」。
その強みと国際交流寮ならではのアイディアで用意された今回のメニューは、初夏の爽やかな風を感じさせるハワイのローカルフード「ロコモコ」です。
 


厨房からは、ジューシーに焼き上がるハンバーグの香ばしい匂いが漂い、子どもたちの期待も高まります。目の前に運ばれてきたのは、ボリューム満点のハンバーグに、とろりとした目玉焼きがのった本格的な一皿。

「美味しい!」「ハワイのご飯なんだね!」

子どもたちは大きな口で頬張り、大満足の様子。
ただお腹を満たすだけでなく、国際色豊かなKU I-Houseだからこそできる「食を通じて海外の文化に触れる楽しさ」を、五感で体験する素晴らしいきっかけとなっていました。
 



いま、子どもたちに伝えたいこと。地域で見守る安全の輪


「ざわざわ……誰か悪いことしたのかな?」

お腹がいっぱいになり、リラックスした空気が流れる食堂に、一瞬だけちょっぴり緊張した表情が広がります。
食堂の入り口に現れたのは、威厳ある制服姿の千里山交番の警察官の方でした。

もちろん、誰かが悪いことをしたわけではありません。
今回は子どもたちが毎日を安全に過ごせるよう、特別な「安全講話」を行うために駆けつけてくださったのです。

実は4月から6月にかけての初夏の時期は、進学や進級によって行動範囲が広がり、子どもの自転車事故や交通トラブルが増える時期だと言います。

「自転車に乗るときは、この標識をしっかり見てね」
「歩くときは、周りの車によく注意しよう」
 


真剣に語りかける交通ルールや心構えに、子どもたちは真剣な眼差しで耳を傾けていました。
 

「地域の大人や学生さんが、こうして子どもたちと顔の見える関係を築いてくれていること自体が、実は最大の防犯対策なんです。私たち警察としても、こうした温かい見守りの輪に一緒に加わることができて、非常に心強いです」


お巡りさんに質問する子どもたち

 


今日という日を刻む「手形アート」に、みんなの夢をのせて


楽しかったひとときも、いよいよ終わりの時間が近づきます。
この日の思い出を形に残そうと、RAたちが最後に用意していたのは、大きな木の幹が描かれた1枚の模造紙でした。

「ここに、みんなの手形でたくさんの葉っぱをつけよう!」
赤、青、黄色、緑……思い思いのインクを手にいっぱいつけて、ペタペタと楽しそうに手形を押していく子どもたち。
真っ白だった模造紙が、一瞬にして色鮮やかな手形の葉で彩られていきます。
 

さらに、RAたちから素敵な提案が。
それは、その手形と一緒に「将来の夢」を書き込むこと。
「体操の選手になりたい」 「みんなを笑顔にできる人になりたい」 「家族を守る」
小さな手形の横に並んだ、力強く純粋な言葉たち。

子どもたちが掲げたたくさんの夢が、いつか大きな実を結びますように。
そんな願いを込めて、世界に一つだけの「夢の木」が完成しました。
 



RAインタビュー:「支える側」が子どもたちから受け取る、明日への活力




この活力に満ちたイベントの舞台裏には、主体となってイベントを企画・運営したRAたちの、イベントにかける想いと成長のストーリーがありました。

回を重ねるごとに「毎回が新鮮な挑戦です」と語る彼ら。
今回、子どもたちを盛り上げるために企画したのが、国際交流寮というバックグラウンドを活かした「韓国語クイズ」でした。

「子どもたちは興味がないとすぐに飽きてしまうので、どうすれば楽しんでもらえるか考え、クイズ形式で韓国語の勉強ができるように工夫しました」と語る韓国人RAの学生。
その狙いは見事に的中し、クイズは大盛り上がり。

「私の母国である韓国では、地域全体で子どもを見守る文化が根付いています。このこども食堂を通じて、自分たちも日本の地域社会に貢献できていると実感できました。同時に、自分の幼少期を思い出し、温かい気持ちになって『親に会いたくなっちゃいました』」と、照れくさそうに明かしてくれる一幕もありました。
 



普段の大学生活ではなかなか交わることのない、地域の子どもたちとの触れ合い。それは学生たちにとっても、未来を照らす大きな刺激となっていました。

将来、教員免許取得を目指して勉強中という学生は、今回の経験をこう振り返ります。
「もうすぐ教育実習を控えているのですが、実際に子どもたちに『教え、伝える』という経験ができたことは、明日からの授業や自分の夢に向かう上で、大きな自信とモチベーションになりました」

単にこの街に「住む」だけでなく、大学生という自分たちの存在が地域にどう貢献できるのかを、彼らは肌で感じていました。

「こうして地域と繋がっていることで、親御さんも『ここに寮がある』と分かって安心できるし、防犯的にも絶対に良いはずです。小学生の目線から見たら、大学生って体も大きくて、少し距離のある遠い存在だと思うんですよね(笑)。 でも、こういうイベントを通じてその壁がなくなれば、街の中で『いつでも頼っていいお兄さん、お姉さんがいるんだ』という信頼感に変わる。子どもたちがのびのび過ごせる街になると思うんです」 

そう語るRAたちの真っ直ぐな眼差しは、地域の子どもたちにとって、いつでも頼れる心強い「街のお兄さん・お姉さん」そのものでした。
 


寮長夫妻インタビュー:学生寮のイメージを変え、地域を繋ぐ




学生たちが語る「地域との繋がり」。
この熱い想いを支え続けてきたのが、寮長夫妻です。

「企画・運営してくれてるのは、すべてRAたちです。みんながアイデアを持ち寄って、私たちが却下することなんてほぼありません。『じゃあ、これでいこう!』と即決してしまうほど素晴らしいものばかりで、毎回私たちの想像以上のこども食堂を作り上げてくれるんです。」

実は、今回子どもたちに大好評だった「ロコモコ丼」も、そんなRAたちと生まれたアイデアでした。
企業活動の一環として運営されるこども食堂には、食品衛生や安全性の観点から「決められた食材・メニューの中から調理する」というルールがあります。

「毎回同じだと子どもたちも飽きてしまう。限られた食材の中で、国際交流寮らしい、何か新しいものを出せないか」と学生たちが知恵を絞り、ハンバーグを使ってハワイのローカルフードであるロコモコ丼へとアレンジすることを提案してくれたのだと言います。

「せっかく子どもたちに食べてもらうなら、絶対に『美味しかった!』と言って笑顔になってほしい。だからこそ、限られた制約の中でも工夫を凝らしてくれる学生たちの存在は、本当に心強いです」

こうした学生たちの純粋な熱意と、そこから生まれる寮の温かい空気感は、周辺地域の「大人たち」の心をも大きく動かしています。

「この寮の前の道は、地域のPTAの方々が交代で朝の『見守り活動』をされているんです。その時に地域の方から、『次回のこども食堂はいつやるの?』とよく声をかけていただきます。今やポスターを貼る前に、ご近所の方々の間で口コミで行き渡ってしまうほどなんです(笑)」

さらに、現代の地域社会が抱える「少子高齢化」という課題に対し、この学生寮が思いがけない「解決の場」になっている実感を語ってくれました。

「この街には『子どもたちのために何かしたい、地域の役に立ちたい』と思われている親世代の方がたくさんいらっしゃいます。そんな方々が求めているのは『誰かの役に立つ場所』なんです。こども食堂の実施について声をかけると、皆さん笑顔でボランティアに駆けつけてくださいます
 


寮の運営自体にも素晴らしい好循環が生まれていると言います。

「かつては『学生寮=若者が集まって騒がしい場所』というネガティブなイメージを持たれることもありました。しかし、普段から地域の方に『お疲れ様です!』『こんにちは』と大きな声で礼儀正しく挨拶をする寮生たちの姿を見て、近所の方からも『学生さんは本当に立派ね』と言っていただけるようになりました。ただの付き合いではなく、地域と密に連携して信頼を勝ち得てきたからこそ、今のこの温かい風景があります。これこそが、この活動の本当の醍醐味です」
 


関わる人すべてに「よい朝」が訪れる街へ


初めて訪れた場所で少し緊張していた子どもたちには、年の離れたお兄さん・お姉さんと全力で笑い合えた楽しい思い出と、「いつでもここに頼っていいんだ」という街の中の新しい居場所を。
そして、将来への不安や課題を抱えながら日々を過ごす学生たちには、地域を支え、誰かを笑顔にできたという確かな手応えと、明日への確かな活力を。

『こども食堂 けーゆーはうす』という一つの取り組みは、関わる人すべての日常に、心地よい変化の風を吹き込んでいました。

共立メンテナンスが提供するレジデンス事業は、単に学生たちに「住まい」を提供する場所にとどまりません。そこで暮らす学生たちが主体となり、寮長夫妻が支え、地域と密に繋がることで、学生寮はその街全体の「安心」へと進化していきます。

今回で9回目を迎え、過去の先輩たちの背中を見て、その想いとノウハウが引き継がれてきたKU I-Houseのこども食堂。

地域を想う学生たちの熱意というバトンが繋がり続ける限り、この学生寮はこれからも街の日常に「よい朝」を届け続ける、かけがえのないリビングであり続けることでしょう。